ブルーインパルスと里山

地元の空をブルーインパルスが飛びました。
地上には山階春日神社と天霧山。
ブルーインパルスとは?

ブルーインパルスは航空自衛隊のアクロバット飛行チームの愛称です。正式名称は「第4航空団第11飛行隊」。宮城県の松島基地を拠点に活動しています。青と白にカラーリングされた6機の機体が大空をキャンバスにしてスモークで美しい軌跡を描きます。
使用している機体は国産の練習機であるT-4。パイロットは厳しい選抜と訓練を経て選ばれた精鋭です。今回は陸上自衛隊第14旅団の創隊記念および善通寺駐屯地の開設75周年記念行事に合わせて香川県の上空を飛行しました。
さらに6機のうち1機の操縦桿を握っていたのは香川県出身のパイロットとのこと。ブルーインパルスは自衛隊と国民との架け橋となる役割も担っています。
飛行ルート
事前に公表されていたフライトプランは次の通り。
- 11時56分
- 丸亀城 上空通過
- 11時59分
- 香川県立アリーナ 上空通過
- 12時02分
- 瀬戸大橋 上空通過
- 12時05分
- 善通寺駐屯地(10分の展示飛行)
4月26日 予行飛行
テスト飛行はプラン通りの飛行。
展示飛行(アクロバット飛行)も見ることができました。



4月27日 編隊飛行
本番は瀬戸大橋通過後、ドクターヘリ出動のため上空で待機することになり、その後中止となってしまいました。善通寺方面には来なかったものの、多度津で編隊飛行は見ることができました。

19年ぶりの飛行
ブルーインパルスは日本各地で展示飛行をしていますが、香川県には航空基地がないため滅多に見られません。前に見たのは平成18年(2006)。その時は突然の爆音に驚き、ただ空を眺めることしかできませんでしたが、今回はしっかり記録として残すことができました。
撮影は山階春日神社のほとりにある藤波池の土手からおこないました。まわりに遮るものがなく、目の前には里山が広がります。神社の駐車場もこの日はいっぱいでした。

善通寺方面の里山
香川県では大抵どの方角にも山が見えます。おむすびのような山。とうふのような山。地学ではビュートやメサと呼ばれますが、これらの独特な地形が香川の特徴でもあります。今回、ブルーインパルスが目指した善通寺方面にも五岳山をはじめとする変わった形の山が並んでいます。

五岳山
五岳山は善通寺市西部に連なる5つの山々の総称で、空海が幼少期に修行した場所と言い伝えられています。また、それぞれの山には特定の願いが込められており、登山や巡礼の対象としても人気があります。
香色山
善通寺の裏山に位置し、初心者でも登りやすい山。山頂には「佐伯直遠祖坐神」と刻まれた石廟や明王の石像があり、平安時代後期の経塚(仏教の教典を後世に残すために埋めた塚)も確認されています。願いは「ご先祖・家族に感謝」。
筆ノ山
江戸末期は丸亀藩の砲術隊がこの山の麓を標的に実弾射撃訓練をしていたことから「どんど山」とも呼ばれていました。山頂には幸福を授ける宝生如来の石仏が祀られています。山の形が筆の穂先のように尖っているのが特徴。願いは「学問をきわめる」。
我拝師山
五岳山の中で最も高い山。山中には出釋迦寺があり、山頂には大日如来が祀られています。古くは倭斯濃山と呼ばれ、空海が幼少期に山頂から身を投じたという伝説が残っています。願いは「未来を決断する・大願成就」。
中山
山頂には阿弥陀如来の石仏が祀られ、山間部には平安時代の山岳寺院「大窪寺跡」や歌人として有名な西行法師ゆかりの「西行庵」があります。我拝師山と火上山の中央に位置することから中山と名付けられたようです。願いは「縁結びの山」。
火上山
山頂には物事を成就させるための知恵を授けてくれる不空成就如来の石仏が祀られています。古代では軍事上の重要な位置にあり、のろし台が置かれたことから火上げの山と名付けられたとされています。願いは「運気上昇・商売繁盛」。
以上が五岳山です。五岳という山は日本各地にありますが、自然の美しさと歴史的な背景を兼ね備えた魅力的な山並みです。
その他の里山
山階地区から見える里山は五岳山の他にもあります。
甲山
五岳山の北にある小さな山。戦国時代には天霧山の城主香川氏の武将として名をはせた朝比奈弥太郎の居城「甲山城」がありました。現在、東の麓には甲山寺、西の麓には山階の春日神社から分祠されたとされる春日神社が鎮座しています。
大麻山
五岳山の南にある大きな山。独立峰としては香川県で最も高い山であり、こんぴらさんで有名な象頭山へと続いています。頂上付近にはテレビ塔があり、この地区の地デジアンテナはこの山の方に向けます。
これらの山が織りなす景色は屏風のようであることから、この近辺では古くから「屏風浦」とも呼ばれています。
故郷の風景
故郷を感じる瞬間はいつも慣れ親しんだ景色と共にあります。そんな見慣れた景色の中を爆音を響かせ突き進むブルーインパルス。日常の中に非日常を感じた瞬間でした。
日本にはハレとケという概念があります。「ハレ」は晴れ舞台・非日常のことを指し、「ケ」は日常的な生活を指します。山階地区のハレといえば秋祭りの日。普段は静かな田舎ですが、この日だけは大きな賑わいを見せます。

特別な日は何気ない日々があってこそ輝くもの。滅多にないことだから特別になるのです。今回のブルーインパルスの飛行は間違いなく「ハレ」でした。