令和の獅子頭

令和元年から進めていた獅子頭の新調計画。ようやく完成した獅子頭には魅力がいっぱい詰まっています。

讃岐獅子頭 令和獅子 上小原獅子組

今まで獅子舞奉納に使ってきた獅子頭は奇しくも平成元年に誂えたものでした。34年ぶりの新調。そして時代と共に形を変えていく讃岐の獅子頭。

今回は今まで使ってきた獅子頭を「平成獅子」、新しい獅子頭を「令和獅子」としてご紹介していきましょう。

香川県の獅子頭をよく知らない方は獅子舞道具 「讃岐獅子頭」と合わせてご覧ください。

令和獅子の御姿

まずは新しい獅子、令和獅子をご覧ください。

猫獅子(毛獅子)

香川県の伝統的工芸品「讃岐獅子頭」です。特に顔に毛の生えた獅子頭は猫獅子(毛獅子)と呼ばれています。

耳の上下、口の開閉は讃岐獅子頭の特徴ですが、猫獅子は目も動きます。上顎と下顎に鋭い牙、ギザギザの歯。猫のような髭。縞模様の眉毛も特徴的です。

伝統と革新

香川県には多くの獅子組がありますが、獅子頭に対する考え方もそれぞれです。昔の獅子頭の形を継承しようとする獅子組もあれば、より見栄えのする獅子頭に一新する獅子組もあります。

上小原獅子組では基本的な要素はそのまま継承し、部分的に新しい要素を取り入れて獅子頭を新調しました。

一般的に伝統芸能は昔の形を変えずに継承することを重要視します。しかし讃岐の獅子舞は時代の風潮を反映し、舞を競い合う中で形を変えながら発展してきた独自の文化を持っています。

伝統と革新の融合。それが上小原獅子組が継承してきた民俗芸能「獅子舞」です。

平成獅子と令和獅子

ここで平成獅子と令和獅子を比べてみます。

平成獅子
(1989年)
令和獅子
(2023年)
木枠の下幅約33cm約33cm
木枠の最大幅約38cm約36cm
木枠の高さ約29cm約27cm
底板の長さ約24cm約24cm
全体の幅約45cm約55cm
全体の長さ約30cm約40cm
全体の高さ約32cm約32cm
重さ約2.30kg約2.86kg
製作丸岡獅子屋工房 蓮心

型と大きさ

獅子頭の型は職人さんによって違います。今回は職人さんが使っている型の大きさがひとまわり小さかったため、同じ大きさになるよう型から作っていただきました。

一般的に讃岐獅子頭の大きさは木枠の下の幅の長さで区別します。比較表を見ると共に1尺1寸(約33cm)で同じであることがわかります。木枠のその他の長さや底板も多少の誤差はありますがほぼ同じ大きさです。

しかし全体の幅や長さを比べてみると約10cm大きくなっています。これは耳や髭の生える角度の違いです。平成獅子の耳や髭は骨格(型)に沿うような角度で生えていますが、令和獅子は耳は左右に張り出し、髭も斜め前方に向かって生えています。また毛の長さも令和獅子の方が長くなっています。

令和獅子は毛が外に向かって長く伸びており、獅子を振ったときに毛がフワッと舞うようになりました。

重さ

約0.56kg重くなりました。

出来上がったばかりの獅子頭は水分を含むため重くなるそうで、水分が抜け切るには2~3年かかるそうです。使うのは大変ですが手首は鍛えられそうです。

毛の色

上小原獅子組の伝統である「黒の猫獅子」は継承しました。顔・髪・耳は黒。髭は白。眉は赤・白・黒の3色。牙や歯は白。これらの基本的な配色はそのまま採用しました。

令和獅子の特徴

讃岐獅子頭 令和獅子 上小原獅子組

令和獅子は平成獅子よりも顔つきが逞しく派手になりました。親と子でも顔つきが異なるように獅子にも個性があります。具体的にどこが変わったのか詳しく解説します。

凄みのある目

讃岐獅子頭 令和獅子(目) 上小原獅子組

瞳孔が少し小さくなり、金色の虹彩が入りました。

白い結膜の部分には本物の血管のように赤糸が張り巡らされ、金糸も使われています。

さらに凄みのある目になりました。

金渦の装飾

讃岐獅子頭 令和獅子(渦の装飾) 上小原獅子組

令和獅子の最も大きな変更点は、獅子のたてがみを象徴する金渦の装飾を取り入れたこと。

渦模様は唐獅子にはよく見られますが、従来の猫獅子にはなかったものです。その渦模様を顔の横と下顎に施しました。

猫獅子の艶やかな毛の質感と唐獅子の漆の光沢の両方を兼ね備えた、より見栄えのする獅子へ変貌を遂げました。

威嚇する口

讃岐獅子頭 令和獅子(口) 上小原獅子組

平成獅子よりも歯茎が剥き出しになり、迫力のある口になりました。

下顎の金渦の装飾にあわせて口のまわりにも金箔が施され、口元が強調されています。

まさに「獅子の歯噛み」を表した威嚇する口になりました。

讃岐獅子頭 令和獅子(舌) 上小原獅子組

口を開けるとギザギザの歯の隙間から赤い舌が見えます。

舌に使われている布には菊紋の織模様

演舞のときにあまり見えない細かい部分にもこだわりが見られます。

2重音の鈴

讃岐獅子頭 令和獅子(鈴) 上小原獅子組

鈴の数は23個から19個に減らしました。

数を奇数にするのは「割れない」というゲン担ぎの意味もありますが、奇数が古来から縁起の良い数字とされているからです。

平成獅子の鈴はすべて「1寸」でしたが、令和獅子は「1寸」と「1寸2分」の2種類の鈴を交互につけました。鈴の音階が違うため獅子頭を振った時の音に深みが出ます。

伝統の焼印

讃岐獅子頭 令和獅子(焼印) 上小原獅子組

「工房 蓮心」の職人さんが師事している松下氏の焼印が打たれています。

「善通寺」という産地名も入っています。

令和の墨書き

讃岐獅子頭 令和獅子(墨書き) 上小原獅子組

「令和五年壱月吉日 新調」

獅子頭内部の底板の部分には、神社でお祓いをしてもらった日付を墨書きで入れていただきました。

獅子頭の内部も漆が塗られており、光沢があります。

コロナ禍での獅子頭製作

平成獅子は老朽化が進み、いつ壊れてもおかしくない状況でした。しかし幸か不幸かコロナ禍はその問題を解決するための時間を作ってくれました。

獅子舞ができない空白期間を有効活用して獅子頭の新調を進めることができた点に関しては良かったと思っています。獅子頭は新調はもちろん修繕にも時間がかかるため、この時期に職人さんに依頼をした獅子組も多いようです。

コロナ禍で獅子組のメンバー同士で集まる機会も減ってしまいましたが、通信アプリを使って随時連絡は取り合いました。画像加工アプリを使って完成イメージを共有したり、メンバー間で投票したりしながら、効率よく獅子頭の製作を進めていくことができました。

讃岐獅子頭の伝統工芸士である秋山賢二氏にはお忙しい中、こちらの相談や要望に何度も応じていただきました。本当にありがとうございました。

上小原地区の宝物

獅子頭は地元の自治会(氏子)の共有財産であり祭具です。獅子頭に限らず油単、太鼓、鉦などほとんどの獅子舞道具がそうです。

上小原獅子組の獅子ではなく上小原地区の獅子、上小原地区みんなの宝物。これからも大事に守っていかなければいけません。

コロナ禍においても地域の皆様に支えられて上小原獅子組は活動できています。この令和獅子の顔を早く覚えてもらえるよう、また地域から愛される獅子舞にすべく、これからも獅子組の運営に励んでまいります。

讃岐獅子頭 令和獅子(前掛け付き) 上小原獅子組

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