上組青年獅子団

上組青年獅子団とは?
上組青年獅子団とは私たちの前身となる組織です。この組織は昭和30年代に解散し、その後に再結成されたのが今の上小原青年親睦会(上小原獅子組)ということになります。
再結成時、獅子舞の道具はすべて引き継がれ、舞や鳴り(お囃子)もそのままの形で継承されたため、私たちは上組青年獅子団の獅子舞を受け継いでいると言えます。
どんな組織だったのか?
上組青年獅子団のことを知っている人は少なくなってきているのですが、ある会員の家で当時の記録簿が保管されていました。

記録簿の表紙には「昭和二十二年十月」とあります。
昭和22年は西暦1947年。今から73年前の記録です。
記録簿には、団員の名前、獅子舞道具の修理および新調、収支内訳など、団体運営に関することが細かく書かれています。
その中でも目を引くのは団体の規約。今回はこれを読み解くことで上組青年獅子団の当時を探ってみようと思います。
規約からわかる歴史
下の写真は数ページに渡って書き綴られた規約をまとめたものです。規約は2つあり、ひとつは昭和22年に制定したもの。もうひとつは昭和28年に改正したもののようです。


まず、全体を通してわかるのは、昭和22年と昭和28年で文章の書き方が大きく変わっていることです。
昭和22年は送り仮名はすべてカタカナで、漢字は旧字や俗字などの異体字が多く使われています。例えば、獅子団の「団」も「团」と書かれています。戦後の大きな動乱の中、獅子団を継続させてきたことが伺えます。
目的
第一條
昭和22年 上組青年獅子団 記録簿より引用
古耒ノ慣行ヲ尊重シ敬神崇祖ノ國風ヲ振作スル意味ニ於テ本規約ヲ設定ス
「古くからのしきたりを重んじて、神を敬い先祖を崇める風習を盛り上げるために規約を作った」と書いています。
「古耒ノ慣行」という表現は、昭和22年の時点で既に獅子舞が古くから行われていたことを証明しています。
また、目的の根幹は今と同じですが、より信仰に重きをおいていたようです。「敬神崇祖の國風」というあたりが、当時の信仰心の高さを象徴している気がします。
団員
第二條
本团ハ上組青年獅子团ト言フ第三條
昭和22年 上組青年獅子団 記録簿より引用
本团ハ上小原東上居住者ニシテ年令十五才ヨリ二十五才ニ至ル男子ヲ以テ組織ス
但シ一軒ニ二人以上居ル時ハ家庭ノ都合ヤムヲ得ザル場合ハ比ノ限リニアラズ
どうやら「上、小原、東上の集落に住んでいる15〜25才の男子」が入団していたようです。
「1軒に2人以上いて家庭の都合でやむをえない場合はこの限りでない」と但し書きはあるものの、若い男子がいる家庭はもれなく入団していたということでしょうか。
獅子舞をするには体力と人数が必要不可欠です。戦後で人手が足らない中で獅子舞を続けるために必要なルールだったのかもしれません。
昭和22年の規約で「15才」のところを、昭和28年の規約では「新制中学校卒業」としているのも時代を感じられます。ちょうど中学校の教育が義務化された頃なんですね。
役員
第四條
本团ハ左ノ役員ヲ置ク
一、团長 一名
二、副团長 二名
三、相談役 六名第五條
团长副团长ハ本团貟中ノ最年长ノ順位ヲ者ツテ之ニ任ズル
最年長者事故アルトキハ順次年長ヲ追フコト第六條
相談役ハ當組總㑹ニ於テ選出スル
相談役ハ毎年獅子稽古始ノ日ニ其ノ集合出席ヲ求メ修理新調其ノ他ノ事ニ付イテ相談スルモノトス第七條
昭和22年 上組青年獅子団 記録簿より引用
团長其ノ他役員更迭ノ際ハ本团関係書類計器等ハ相談役二名以上立会ノ上後任者ニ引ツグモノトス
役職で気になるのは「相談役」です。どんな役職だったのでしょうか。
第6条には「相談役は当組総会で選出する」とあります。当組総会は祭りを担当する集落の者が集まって話し合う、自治会の総会のようなものと思われます。さらに「相談役は毎年、獅子舞の稽古始めの日に集まってもらい、修理や新調その他の事について相談する」とあることから、おそらく相談役は自治会の方が獅子団の役員となり、舞い手を支援、指南していたのでしょう。
この仕組みは獅子宰領という形で今も残っています。獅子宰領は当組(自治会)の中から2名選出するようになっています。獅子舞は舞い手だけではなく、それをサポートする体制が必要なのです。
また、第5条では「団長、副団長は団員の中の最年長者に任せる」「最年長者に何かあった時は次の年長者」とあることから、年功序列の団体だったことがわかります。昔はそれがあたりまえだったのでしょう。ただ今は必ずしも年功序列ではなくなり、互選によって選ぶようになっています。
第7条では役員の引き継ぎにも触れています。条文には「本団関係書類や計器などは相談役2名以上立会いの上で、後任者に引き継ぐ」とありますが、計器って何でしょうか? 当時の貴重品か何かでしょうか?
当時に決めたこと
团貟申合
昭和22年 上組青年獅子団 記録簿より引用
一、团貟ハ時間ヲ嚴守スルコト
二、团貟ハ各年長者ノ命ニ腹從スルコト
三、服裝は總テ質朴軽快ノコト
但シ病気其ノ他止ムヲ得ザル場合ハ囗長ニ届出テ其ノ許可ヲ受クルヲ要ス
四、記録簿ハ团長之ヲ保管ス
規約の最後は、団員みんなで決めたことを箇条書きしています。今風の言葉で書くと次のような感じでしょうか。
- 時間厳守
- 先輩の言うことをよく聞く
- 服装はすべて動きやすく汚れても良いもの
(ただし、病気等の事情があるときは団長に相談) - 記録簿は団長が保管する
当たり前のことですが、とても大事なことだと思います。
今も昔も変わらない
昔の規約を読み解いてみて思うのは、今も昔も獅子組はそれほど変わらないということです。組織のあり方や、団員(会員)の構成は時代の風潮に合わせて変わってきていますが、理念や運営の仕組み、守るべきルールなどは今もそのまま受け継がれています。
上組青年獅子団が何年に結成され、どの組織から受け継いだものかはわかりません。しかし、このような規約を作り、獅子舞を受け継いできたことから考えても私たちの集落で何世代にも渡って、大切に守られてきた伝統ある文化であることは間違いなさそうです。