獅子舞道具 「讃岐獅子頭」
![讃岐獅子頭 上小原獅子組](https://shishimai.site/wp-content/uploads/200421-min-1200x600.jpg)
これから数回に分けて、獅子舞の道具について紹介したいと思います。
最初にご紹介するのは、獅子舞の花形である獅子頭です。
本記事は2023年3月3日に加筆しております。
讃岐獅子頭
獅子頭は奈良時代前期の伎楽面が発祥とされ、神仏の祭礼に登場する全国的にも有名な祭具です。香川県の獅子頭はそこから独自に進化を遂げ、今は讃岐獅子頭として香川県の伝統的工芸品に指定されています。
県内に現存する最古の獅子頭は室町時代のものですが、今の讃岐獅子頭が作られるようになったのは明治初期頃とされています。
讃岐獅子頭の特徴
讃岐獅子頭の特徴は軽くて丈夫であること。
その秘密は張子や乾漆という製法にあります。全国的に獅子頭は木彫りが多いですが、香川県内で木彫りの獅子頭はごく一部地域にしか見られず、ほとんどが「紙」で作られています。
軽くて扱いやすい獅子頭は獅子舞の表現の幅を広げます。また丈夫であることで激しく勇壮な舞にも耐えられます。讃岐獅子頭は舞い手と共に古くから試行錯誤を繰り返してこられた職人さんの業の結晶です。
張子
木や粘土などで作った型に紙を貼りつけ、型抜きして成形する造形技法。内部が空洞になるため軽くなります。張子は「張りぼて」と呼ばれたりもしますが、讃岐獅子頭は張りぼてではなく、頑丈に作られています。
乾漆
ウルシの樹液から精製される漆を乾燥させて固める漆工芸の技法。何層にも塗り重ねられた漆は強度を高めると共に、艶やかで美しい光沢を生み出します。
讃岐獅子頭の種類
香川県内には800組を超える獅子組があり、それを超える数の獅子頭がありますが、同じ顔の獅子を探すのは困難と言えるほどの多様性があり、それが讃岐獅子頭の特徴のひとつとなっています。また、讃岐獅子頭は大きく分けると2種類あります。
唐獅子(塗り獅子)
外見が全国的によく見られる獅子頭と近く、赤や黒の漆と金箔などで装飾された獅子頭です。
獅子頭の中の紐を操ることで、耳の毛を上下させたり、口を開閉させたりできます。
型は東讃型(高松型)、西讃型(丸亀型)など地域や作る職人さんによって大きく異なります。
最近は顔の塗り分けを変えたり、毛の色を変えたりと種類が増えてきています。
![讃岐獅子頭 唐獅子(塗り獅子) 上小原獅子組](https://shishimai.site/wp-content/uploads/kara-jishi-min.png)
猫獅子(毛獅子)
唐獅子より後に広まった顔が毛に覆われた獅子頭です。
耳の上下や口の開閉だけでなく血走った目玉が左右に動きます。上顎と下顎にそれぞれ鋭い牙がついており、歯はギザギザ。唐獅子よりも獣っぽさがあり、猫のような髭も生えています。縞模様の眉毛も特徴的です。
毛の色も黒、赤、茶、白など種類があります。
昔は唐獅子でしたが、昭和の頃に猫獅子に変えた獅子組も多いようです。
![讃岐獅子頭 猫獅子(毛獅子) 上小原獅子組](https://shishimai.site/wp-content/uploads/neko-jishi-min.png)
上小原獅子組の獅子頭
上小原獅子組には唐獅子と猫獅子の両方の獅子頭がありますが、獅子舞奉納では昭和の時代から猫獅子を使っています。そして毛の色は黒。これが今の獅子組の色になっています。
雄獅子
獅子舞の獅子に性別がある地域があります。
私たちの地域もそうです。多度津町山階の春日神社には秋祭りの時に6つの獅子組(6頭の獅子)が集まりますが、その中において上小原獅子組の獅子は唯一の雄。他の獅子は雌です。雄の獅子は「雄獅子」。雌の獅子は「雌獅子」と呼びます。
猫獅子は雄、唐獅子は雌、のように種類や見た目の違いで雄雌を分ける地域が多いですが、見分ける基準は獅子組ごとに異なります。
思い出のある獅子頭
今の獅子頭は、丸岡獅子屋(旧 丸岡光信獅子頭製作所)で平成元年(1989)に製作されたものです。平成から令和までこの獅子頭で奉納し続けてきました。1演舞を1回とすると今までに3000回以上使っている実績や思い出のある獅子頭です。
現在、獅子頭の新調を進めているところですが、この獅子頭にはまだまだ活躍してもらわなくてはいけません。これからも大切にしていきたい獅子頭です。
個性豊かな獅子頭
讃岐の獅子頭は個性豊かです。職人さんが手作りするため、同じ型から作られた獅子でも顔つきは変わります。
そして他の獅子組に負けないよう、他の獅子組にはない個性を求めて今もなお進化し続けています。
近隣の獅子を例にあげると目の動く唐獅子。唐獅子は内部の仕組みを作るのが難しいらしく目の動くものはほとんどありません。しかしそんな概念を超えて猫獅子のように目が動くよう作られた唐獅子の獅子頭があります。
多度津町山階地区には舞い方も含めて個性豊かな獅子が集まります。10月の第1日曜日に地区内にある春日神社でご覧いただけます。
「獅子舞道具」記事一覧
- 第1回 獅子舞道具「讃岐獅子頭」
- 第2回 獅子舞道具「油単」
- 第3回 獅子舞道具「幟・吹流し」
- 第4回 獅子舞道具「半太鼓」
- 第5回 獅子舞道具「大太鼓」
- 第6回 獅子舞道具「鉦」
- 第7回 獅子舞道具「法被」
- 第8回 獅子舞道具「ダカの衣装」
お世話になります。
猫獅子は購入可能なものでしょうか。
ご教示お願いいたします。
コメントありがとうございます。猫獅子は購入可能です。香川県内に猫獅子を製作している工房がいくつかございます。ただし量産しているものではなく、特注品ですので手元に届くまで期間を要します。まれにフリマやオークションで中古品も目にします。
ご連絡誠にありがとうございます。
例えば購入先、工房をご教示いただくことは可能でしょうか
公表されている情報に限定されますがお伝えできます。メールでご連絡いたします。