獅子舞道具 「油単」

獅子舞道具のご紹介、第2回目は「油単」についてです。
油単(着物)
油単とは?
一般的にはタンスなどを覆う布のことですが、獅子の胴体部にあたる布のことを私たちは「油単」と呼んでいます。また一部の地域では「着物」と呼んだりもしています。まさに振袖のような獅子のハレ着です。油単は獅子組ごとに違います。職人さんが1枚1枚手作業で作っているため、図柄が一緒でも全く同じものはありません。
生地には絹や綿などが用いられ、のり染めや刺繍によって作られています。特に「讃岐のり染」は香川県の伝統的工芸品にも指定されています。
讃岐のり染とは
大川原染色本舗さんのWebサイトより引用
のり染めは、もち米からできた糊を使って染められます。糊を置いたところが染まらず、染料が混ざり合うのを防ぐ方法で、鮮やかな色彩が特徴です。また、渋紙の筒袋に入れた糊を絞り出して描く筒描きは、手で引かれる自由で生き生きとした線が、布上に直接描かれることで温かみのある、味わい深い染め物が仕上がります。
多彩な図柄
油単の図柄は実に多種多様です。龍虎、風神雷神、唐獅子牡丹、武者絵(那須与一など)といった派手なものもあれば、紋だけのシンプルなものもあります。
模様ひとつとっても、唐草模様など全国的に馴染みのあるものから、毛を表現したもの、唐獅子や蝶々が飛んでいる独特なものまで様々です。
珍しい図柄では、弁天様と白蛇、大漁旗のような鯛や蛸、四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)というのもあります。
さらに図柄ではなく全身を毛で覆ったものもあります。この多様性は香川県の獅子舞の特徴のひとつと言えるでしょう。
上小原獅子組の油単

平成26年(2014)に新調した油単です。赤地に龍虎、三つ巴の紋、雲や波が描かれています。先代の油単は同じく龍虎の図柄でしたが、先々代の油単は黒地に唐獅子牡丹が描かれています。


油単は、代々ずっと同じ柄を守り続けるのではなく、時代の風潮や近隣の獅子の影響を受けて変化することもよくあります。先代が龍や波の柄を新しく取り入れたのも水不足に陥りがちな香川県において五穀豊穣を祈願してのことかもしれません。
古くなった先代や先々代の油単は獅子舞奉納の時に使うことはありませんが、道具出しやヘンド、ヨナラシ(獅子舞の稽古)の時に活躍しています。
香川県で獅子舞を見る機会がありましたら、多彩な油単も一緒にお楽しみください。