獅子舞道具 「大太鼓」

大太鼓 上小原獅子組

獅子舞道具のご紹介、第5回目は「大太鼓」です。

大太鼓オオダイコ

大太鼓は一般的によく知られている和太鼓です。長胴太鼓(宮太鼓)とも呼ばれ、典型的な鋲打太鼓と言えます。半太鼓が中高音であるのに対し、大太鼓は低音を奏でます。半太鼓や鋲打太鼓については前回の記事をご覧ください。

大太鼓と言っても特別に大きいというわけではなく、鼓面(バチで打つ皮の部分)は直径約40cm、胴の長さは60cmぐらいです。胴にはカン(釻・鐶)と呼ばれる金属の輪(取っ手)が付いています。

上小原獅子組の大太鼓

大太鼓 上小原獅子組

上小原獅子組では2台の大太鼓を使います。近隣でも大太鼓2台の獅子組が多いですが、3台以上使う地域もあるようです。

大太鼓を打つのは、太鼓打ちと呼ばれる子どもたち。2つ並べられた太鼓の前に立ち、両手のバチを使って胸の前で打ちます。半太鼓と違い、フチも打ちます。

移動時はカンに括り付けられた綱を持って運びます。この大太鼓は昭和59年(1984)に作られたもので、皮は平成26年(2014)に張替えています。

大太鼓のバチ(桴)

木を削って作られるバチは直径約3cm、長さ20cm強の円柱状ですりこぎ棒のような形をしています。持ち手側には房をつけます。

大太鼓の台

太鼓台は断面が工字形になるように組まれた木製の台です。高さは約60cm。太鼓を受ける部分は半円形状で、大太鼓の曲面に合わせて作られています。各部に波形の彫刻が施され、台の下にはバチを収納できる溝も彫られています。半太鼓は太鼓と台を金具で固定しますが、大太鼓は台の上に置くだけです。台には紅白の紙垂シデを垂らします。

太鼓打ち

太鼓打ち 上小原獅子組

私たちを含め香川県の西部では子どもの太鼓の打ち手を太鼓打ち(タイコブチ)と呼んでいます。芸や舞をしながら太鼓を打つのが特徴で、香川県の獅子舞の見どころのひとつです。

上小原獅子組の太鼓打ちは半太鼓のリズムに合わせて芸をしながら太鼓を打ちます。芸にはすべて名前と順番があり、中には打ち手の左右(立ち位置)で振り付けが違うものもあります。

打ち手の変化

太鼓打ちは誰でもなれるわけではなく、自治会の会員を身内に持つ小学生が対象です。昔はその中でも小学2年生の男子のみに限定されていました。しかし近年の少子化によって、今は小学生であれば学年や男女関係なく参加でき、希望すれば数年続けることも認められるようになりました。

一度太鼓打ちを経験した子どもたちは、翌年以降も参加してくれることも多く、新しい太鼓打ちの子を支えてくれる頼もしい存在です。さらに高学年の子になると半太鼓や鉦を早くも覚え、大人顔負けの力を発揮してくれています。

衣装の変化

上小原獅子組の太鼓打ちの本来の衣装は、綺麗な模様入りの着物もんぺです。そして鮮やかなタスキを掛け、頭には花笠、手元は手甲、足下は白足袋シロタビ草履ゾウリです。昔はさらに顔に白粉オシロイを塗り、口にをさしていました。

しかし近年、太鼓打ちの年齢幅に合わせて衣装を合わせることが困難になったことをきっかけに、徐々に衣装は簡略化されてきています。次第に花笠や着物は使わなくなり、各自準備した法被を羽織るようになりました。そしてそれは令和元年(2019)より唐獅子模様の鯉口シャツへと変化しつつあります。

このような変化は近隣の獅子組でも起きており、昔ながらの衣装をまとう太鼓打ちは年々減っているようです。今後、花笠と着物姿の太鼓打ちは大変貴重なものになるかもしれません。

花笠

花笠

花笠は字の如く、造花などの花で飾られた笠のことです。花と一緒に鳥や蝶などが一緒に装飾されていることもあり、とても多彩です。

笠から伸びている複数の棒や骨組みまでも1本1本丁寧に金紙を職人さんが巻いており、伝統工芸品のひとつと言えるのではないでしょうか。とても美しく華やかなものです。

上小原獅子組では平成23年(2011)頃まで花笠を使っていました。

参考史料

  • 瀬戸内海歴史民俗資料館紀要 第12号
    平成11年(1999) 瀬戸内海歴史民俗資料館/編 


    P12〜14、20
  • 瀬戸内海歴史民俗資料館紀要 第14号
    平成12年(2000) 瀬戸内海歴史民俗資料館/編 


    P67

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