獅子舞道具 「鉦」

鉦 上小原獅子組

獅子舞道具のご紹介、第6回目は「鉦」です。

カネ平鉦ヒラガネ

鉦は金属製の打楽器です。香川県内でよく使われているのは平鉦と呼ばれる鉦で、皿のような形をしています。もとは仏具で、中世の念仏踊りなどで手で持って鳴らす楽器・摺鉦スリガネでしたが、次第に芸能のお囃子で使われるようになり大型化したとされています。

直径は1尺強(30cm余り)あります。木の台に吊るし、棒で打つと「カンカン」と甲高い音が鳴ります。

香川の伝統的工芸品

鉦は鋳物です。円形の鋳型を作り、そこに溶かした金属を流し込んで作ります。金属の原料は主に銅で、少しだけスズが入っています。錫が多いほど澄んだ音が鳴る鉦になりますが、入れすぎると割れやすくなるそうです。金属が冷え固まった後、鋳型を外し、表面を滑らかに削って完成です。

鋳物は全く同じ作り方でも、気温や湿度によって仕上がりが変わる繊細さがあり、讃岐鋳造品として香川県の伝統的工芸品にも指定されています。

讃岐鋳造品
手作りの原型に溶かした金属を流し込み、成形して着色。一貫して鋳物師(いもじ)が携わり、仏像や梵鐘(ぼんしょう)などから器や土産物まで、幅広い製品が作られています。秋祭りの獅子舞に使われる鉦(かね)も、伝統的な鋳造製品です。

高松市公式ホームページより引用

上小原獅子組の鉦

鉦 上小原獅子組

鉦を打つのは大人1人。基本的に座った状態で、凹面(内側)を1本の木槌で打ちます。打ち方は鉦の中央を打つ場合と、鉦の内側のフチを打つ場合の2通りがあり、これを組み合わせて半太鼓に合わせたリズムを奏でます。

上小原獅子組には練習用も含めて3台の鉦がありますが、演舞で使うのは基本的に1台のみです。写真の鉦は平成14年(2002)のものです。

木槌キヅチ

鉦を打つ棒は一般的に撞木シュモクと呼ばれますが、私たちは木槌と呼んでいます。長さは約30cmで先端は丁字型。半太鼓のバチと同じく強く激しく打つことが多いため消耗が激しく、毎年作り直しています。柄の部分には滑り止め用のテープを巻きます。

鉦吊り台

鉦は木製の鳥居型の台に吊るします。この型の台は香川県の中西部に多く見られます。鉦は紅白の紐で3箇所固定し、さらに紅白の紙垂シデを垂らしています。台の上部には約2mの竹竿を括り付けており、移動時は大人2人で担いで運びます。

鉦 上小原獅子組

遠くまで響く音色

鉦の音はとても遠くまで響き渡ります。それもそのはず、日本一やかましい祭りと言われる三重県桑名市の石取祭で使っている鉦と同じ形だそうです。しかし、その「やかましさ」の中にどこか郷愁と心地良さを感じるのは、先祖から受け継がれた遺伝子によるものなのでしょうか。

秋祭りの日が近づくと獅子舞の稽古が始まります。稽古場所が遠く離れていても、何処からともなく聞こえてくる鉦の音。香川県民はこの音を聞くことで秋の訪れを感じるのです。

鉦 上小原獅子組

十人十音

同じ鉦や太鼓でも打ち手によって音は変わります。ある人は優しい音。またある人は激しい音。近年は子どもが打つこともあり、音の幅はさらに広がりました。リズムは同じでも人の個性が音となって現れます。十人十色ならぬ十人十音です。お互いを尊重しながら、自分なりの思いを込めて囃す。それが上小原獅子組の打ち方かもしれません。

獅子舞をご覧いただく際は、打ち手によって変わる演舞にもご注目ください。

参考史料

  • 瀬戸内海歴史民俗資料館紀要 第12号
    平成11年(1999) 瀬戸内海歴史民俗資料館/編 


    P14、21、22
  • シシマイ×シシマイ vol.1
    令和元年(2019) 無形文化遺産部/編 


    P20、21

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